「 秋憂月歩 」

「 秋憂月歩 」



寂しがり屋が手を取り合って
秋の夜風に吹かれます
失う事を恐れては
遠ざけてきた思い出が
遥かで今も 光ります

さよならだけを抱きしめた
あなたは少し微笑んで
もう簡単な事だよと
冷たくなった頬のまま
消えゆく星を 数えます

 この道が
 この指が
 その眼差しを
 辿れないなら

死にたがり屋が頬寄せ合って
静けき別れを詠います
涙さえもが溶け合って
もう永遠も 見えないような

白く白い
遠く遠い
凍えるような
温もりに似た
月だけが知る

秋の夜です


『逢う日、花咲く。』で第25回電撃小説大賞を受賞し、デビュー。著書は他に『明けない夜のフラグメンツ』『世界の終わりとヒマワリとゼファー』『君を、死んでも忘れない』『この星で君と生きるための幾億の理由』『あの日見た流星、君と死ぬための願い』

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