「ねえ、スプリングエフェメラルって知ってる?」 隣に座る君が、いつも通りの軽やかな口調でそう言った。その表情は見えないけれど、もう涙は乾いたのだろうかと、少しほっとする。 「なにそれ、知らないや」 僕らは一本の樹の幹 […]
【三題噺】世界の始まりの君の歌
※こちら↓を先に読んで頂いた方が楽しめるかと思いますが、強制はしません。『世界の終わりを君と』 ☁ ☁ ☁ 二人で、錆び付いた鉄道のレールの上を歩いた。 かつて世界を遍く満たし、そこにあった全ての業や咎、あらゆる絶 […]
【三題噺】イニシエのイヴ
ミス・ハダリーは、今日も美しい。 白く、陽の光を透かすような、その繊細な指先で。 ――ともすれば世界さえ、滅ぼしてしまいそうなほどに。 . 苔生す石畳。 無数の草花。 古い教会を再利用しただけのオンボロの建物。 […]
【三題噺】喪失と再生のメメント
想いは、呪いに似ている。 「先生、そっち歪んでますよ」「え、そうか?」 ゆるゆると気だるげに粉雪が降る。それに逆らうように、彼の吐く息が白く烟って灰色の空に立ち昇っていく。 「……先生、雪だるま下手ですね」「……それ […]