「 ドレミの歌 」

「 ドレミの歌 」



どれくらい目を瞑っているの
 歴史の隅のこの陰で
  皆ここから離れていって
   不安な孤独が闇となり
    空に夜を広げていった
     ランプの明かりも消え失せて
      しんと沈んだ静寂の中

どうか私に聴かせてよ
 烈火の力は持たずとも
  水の滴る音のように
   不安の雲を追い払う
    そよ風の如き優しさで
     来世の契りを交わすような
      静かにたゆたうその歌を

どれくらい目を瞑っていたか
 黎明の光にいだかれて
  見果てぬ空に想いを馳せる
   不安な夜は終わりを告げて
    そっとまぶたを開いてみると
     爛漫の朝が眩く広がり
      知らぬ間に涙は溢れる

どこまでも美しく
 連綿と続きながら
  耳を楽しくくすぐっていく
   不安定でも構わないよ
    その優しい指先で
     楽園を空に描くように
      幸せの虹を振りまくように

さあ

歌いましょう


『逢う日、花咲く。』で第25回電撃小説大賞を受賞し、デビュー。著書は他に『明けない夜のフラグメンツ』『世界の終わりとヒマワリとゼファー』『君を、死んでも忘れない』『この星で君と生きるための幾億の理由』『あの日見た流星、君と死ぬための願い』

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