【日記】昔は詩人になりたかった、の話

【日記】昔は詩人になりたかった、の話

また久しぶりの日記に・・・というのをもういちいち書くのをやめにしようと思う。

日記って時間かかるんですよねえ。「この日何があった」というのをただつらつらと書いていくだけならすぐにできそうだけど、家で仕事してると日記にするようなネタもないし・・・ってのももう何度か書いただろうか。

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今週の始め辺りから、急に寒くなりましたよね。

唐突に冬が始まったような気温に、もう冬のパジャマを出しちゃいました。

寒いのは好きではないけど、夏のぐったりするような暑さよりは断然好き。

そして、寒い時に温かいパジャマを着て、布団と毛布に包まる幸せが、結構好きです。

急に寒くなったことがTwitterでも話題になっていて、「令和ちゃん(3さい)」の温度管理能力の低さをネタにするツイートも、トレンドに上がるくらい多く呟かれていました。

こういう、「元号」なんていう概念すら擬人化して、どうにもならない自然の力を許容したりネタにして楽しんだりするのって、日本人はすごいなーと思います。(いや、他の国のことはほとんど知らないんだけど)

さすが八百万の神を持つ国。どんなものにも人格を宿してしまえるのか。

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今日Kindleを眺めていて、銀色夏生さんの詩集が目に入ったので買いました。

これ。

詩集 私を支えるもの

銀色夏生さんは昔からとても好きで、僕の敬愛する詩人さんです。中学生くらいから読んでたかな。

銀色さんは『つれづれノート』という日記風のエッセイも出していて、それも好きで読んでいて、その影響で「蜻蛉ダイアリー」という日記を、中学生の僕は書き始めたのです。

多分、吉田兼好の『徒然草』を意識したタイトルなんだろうな、という所から、こっちは藤原道綱母の『蜻蛉日記』をリスペクトした命名にしました。

銀色さんの詩の中で特に好きなのが「ロマンスの道」というものです。

銀色さんの中では長めの詩で、リズミカルに流れるような言葉の心地よさとか、内容の切なさもいいんですが、文の一文字目の音に着目するとびっくりします。

僕はこの詩が好きで学生時代何度も読んでいたのにまったく気付かず、大人になってから気付いて驚きました。

『ロマンス』という詩集に入っているので、興味あったら注文するなり、図書館で探してみてください。

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僕は今、一応小説家としてデビューして活動していますが、以前は詩人になりたかったんですよね。

中高生時代、人間関係に絶望して、自分の社交性の無さとか、人と関わるということへの恐怖心とかやる気のなさとかで、こんな自分で将来社会の荒波に出て果たして生きていけるんだろうか、という強烈な不安と憂鬱があったのです。

そういう時に銀色夏生さんの詩集をよく読んでいた影響で、詩を書いて生きていけたらいいなぁとぼんやり考えていました。

(実際は、詩で生計を立てるなんて、小説家よりも難しいんじゃないだろうかと今は思っています)

高校三年くらいの頃、担任の数学教師から「入試に備えて論文の書き方を〇〇先生に教えてもらったらいいんじゃないのか」と言われ、ノーと言えなかった僕はいやいやながら、昼休みや放課後なんかに、現代文の教師にしばらく師事していました。

その先生は、静かで知的な雰囲気のおじさん先生で、司書教諭でもあったのか図書室によくいました。図書室という場の静謐な空気と、先生の静かで柔らかな物腰が気に入り、少しずつ信頼して、論文の添削を受けたりしてたんです。

そんなある日、生きることが不器用な自分が、この先も生き続けていかなきゃいけないという暗い憂鬱に押しつぶされそうになっていた時、少しの勇気を出して、その先生に相談してみたのです。

「あの・・・詩人になるには、どうすればいいでしょうか?」って。

そうしたら、その先生はこれまで聞いたことないような大声で爆笑しました。

もう随分前のことなので、その時の細かな感情とかは忘れてしまっているけれど、僕はその時静かに傷付いたんだろうなぁと思います。

先生は笑ったことを良くないと思ったのか、その後すぐに落ち着いて、詩を扱っている雑誌に投稿することを勧めてくれたけど、その日以降僕は、図書室に行かなくなりました。

お世話にもなったのに無言で関りを断つなんて、今思えば大人げない行動だとは感じるけれど、まあ当時は当然大人じゃないし、その頃の心って剝き出しで繊細で傷付きやすくて、血が流れたらなかなか治らないものなんです。

学生の仄かな夢を教師が笑うってのもどうなのよって思うし。(バカにした笑いじゃなかったかもしれないけど。真実は分からないね)

それを言い訳にするわけじゃないけど、先生が教えてくれた雑誌への詩の投稿というのは結局やらずに、生き甲斐を見失ったままずるずると勉強して、大学受験して、そしてなんやかんやで就職もして大人になってしまったわけです。

そんな風に自分に絶望している人間でも、案外なるようになるもんだなと思うし(それなりに努力も苦労もしたけどさ)、今はそれなりにハッピーに生きてるし、人生どうなるか分からないよ、って、今暗闇の中にいる人にそっと伝わるといいな。

『逢う日、花咲く。』で第25回電撃小説大賞を受賞し、デビュー。著書は他に『明けない夜のフラグメンツ』『世界の終わりとヒマワリとゼファー』『君を、死んでも忘れない』『この星で君と生きるための幾億の理由』『あの日見た流星、君と死ぬための願い』

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