お題:神 穏やかな温もりを持った唇が、そっと離れた。彼が塞いでいた私の口元に、教会の静謐な空気が触れた。 たったこれだけのことで、あれだけ溢れていた涙も叫びも、呆気なく止まる。 全身が雷に打たれたように硬直し、やがて思 […]
【掌編】前を向くライオン
お題:新人 黄金の鬣を靡かせて、太く逞しい前脚を岩にかけ、その獅子は唸る様な声で言う。 ――これから初めて獲物を追うお前に、狩りの心得を教える。 はい。お願いします。 ――まず我々は強くなどない。他の生命を奪わなくて […]
【掌編】君の温もり
お題:ラーメン 三分が経ちフタを開けようとすると、目に見えない温もりにその手を止められる。僕の手に触れる安らぎの感触の中に、妙な強い意思を感じる。 「いつも思うんだけど、気に入らないならもっと早くに止めてくれないかな。 […]
【掌編】さよならの風はクチナシの香り
お題:結婚 奏花は笑顔だった。それでいいんだと思う。 クチナシの花を配した純白のドレスに包まれ、皆から祝福されている姿を見ると、僕の胸に空いた穴が少しだけ塞がる様な気がした。 大きなガラス窓から六月の海が見える、白を […]