【日記】秋の夜長の読書と、不意に思い出した過去

【日記】秋の夜長の読書と、不意に思い出した過去

最近、森見登美彦さんの本をよく読んでいる。

有名な『夜は短し歩けよ乙女』は随分前に読んで楽しんだけど、他はまったく読んでいなかった。

去年、SNSで見かけて気になった『恋文の技術』を読んで、手紙の文面だけで物語が進行するというその思い切った手法に感服し・・・

そして最近になって『四畳半タイムマシンブルース』の最高のエンタテインメント性に痺れ・・・

そこから関連ありそうな『四畳半神話体系』も買って・・・

それを読み終わらないうちに、漫画版の『太陽の塔』を買って読んで胸を痛め・・・

漫画版で謎のまま終わった色々なことが気になって原作小説を書い・・・

今はこれを楽しく読み進めているところ。

森見さんの文体ってとても独特で、軽妙軽快かつ不思議と古めかしいものだから、現代の物語のはずなのにどこか大正レトロというか、夏目漱石とかが生きてそうな時代背景かと錯覚する楽しさがある。

独特かつ心地よい文体ってのは、それだけで武器になるよなぁ、と読んでいて思ったな。

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で、前置きが長くなったけれど、今読んでいる『太陽の塔』で、なんということもないシーンで特に物語上大事でもないマフラーが出てくるんだけど、それを読んで唐突に思い出したのだ。

高校時代に付き合っていた恋人と、その別れのことを。

(この後は興味ない人は読まないでください!)

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僕は高校時代、演劇部に所属していた。そしてそこで一年上の先輩部員を好きになって、告白して、付き合うことになった。

その辺の詳細とかは恥ずかしいので思いっきり端折るけど、初めての恋人だったのもあり最初は浮かれていたし、幸福だった。クリスマスには手編みのマフラーなんかももらって、その温かさに酔いしれていたりした。

でも一年くらい経って、自分の心情的にも色々あって、ただひたすらに未熟で愚かだった僕は、恋人へのちゃんとした向き合い方もよく分からずに、不誠実な言動もしてしまっていたのだと思う。

ある日、高校を卒業して専門学校に通っていた恋人から、「他に好きな人ができた」と言われた。

相手は専門学校で帰りが遅くなった時に車で送ったりしてくれていた、大人の男性だそうだ。きっと当時の僕にはない優しさや誠意を持つ素敵な人なんだろう。

その時は自分の中の恋愛感情も風化しかけていたので、特に衝突もなく、じゃあ、別れようか、という話になった。

当時、左手の小指にお揃いのピンキーリングをしていたんだけど、地元を流れる信濃川の川辺に二人で行って、「せーの」で指輪を川面に投げ捨て、「今までありがとう」と爽やかに握手までして、お別れをした。彼女は少し泣いていた。なぜ君が泣くんだ。

(アイキャッチの写真はその信濃川。今年の夏の帰省時に撮ったもの)

さて、初めての恋人と、初めてのお別れだ。多少胸は痛むけれど、自分の中の執着も薄れていたからそれほどつらくはない。

でも、色々と清算しなければいけないのだろうな、と思う。

お揃いの指輪はもう捨てた。あとは、マフラーだ。クリスマスプレゼントにもらった、紺色の毛糸の、不慣れさが伝わる少し目の粗い、かつての幸福の象徴だった、手編みのマフラー。これをどう処分したものか。

僕は自転車に乗って、小学時代からの友人の家に行った。

そして何も説明しないまま、これを燃やそう、とだけ言った。友人は何も訊かず一度部屋に戻り、ライターを持って来た。

家の外は、雪国新潟の冬だけあり、真っ白な雪が積もっている。その上にマフラーを置き、友人に火を点けてもらった。

「火遊び大好き」と友人はおどけて言う。

褒められたセリフじゃないけど、その言葉は、僕が何も言わなくても色々と汲み取って、気遣いとか優しさから、「あんま気にすんなよ」という配慮だったんだろうな、と思う。

パチパチと燃えていくマフラーを、微かな傷心を抱えて眺めながら、「さよならだ」と呟いたら、友人も「さよならだ」と続いてくれた。何の説明もしてないのに。何も訊かずに。

今思い出しても、優しい友だったなぁと思う。

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そんな感じで、僕の高校時代の恋には幸せな結末は来なかったわけだけど、さらには大学の受験勉強シーズン真っ最中だったからキツかったけど、そこからもっと人に優しく誠実になれたように思えるし、良い経験だったなって、今なら思える。

ちなみに余談だけど、僕は当時の恋人と別れた後に電話番号とかも全部消したんだけど、相手は僕の連絡先を消していなかったのか、LINEの「友だちかも?」欄の「電話番号で友だち追加されました」にその人の名前で出てくる。(こっちは相手を登録していない)

そして今、そのアカウントのアイコンには、娘と思われる小さなお子さんの写真が使われている。

スマホの中での一方的な思わぬ再会に、少しセンチメンタルな気持ちになる。

幸せにやっているようで、何より。

僕もそこそこ、幸せになれているよ。

『逢う日、花咲く。』で第25回電撃小説大賞を受賞し、デビュー。著書は他に『明けない夜のフラグメンツ』『世界の終わりとヒマワリとゼファー』『君を、死んでも忘れない』『この星で君と生きるための幾億の理由』『あの日見た流星、君と死ぬための願い』

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